不動産売買というと、物件価格や仲介手数料が真っ先に思い浮かびます。しかし実際には、これら以外にも多くの諸費用が発生し、それらを正しく把握しておかなければ資金計画が崩れる恐れがあります。

例えば購入時には、登記費用や印紙税、不動産取得税、火災保険料、引っ越し費用などが必要になります。売却時には、抵当権抹消登記費用、測量費用、譲渡所得税などが発生します。

これらは契約のタイミングや物件条件によって金額が変動し、時には数十万円から百万円以上の差が出ることもあります。この記事では、不動産売買における仲介手数料以外の諸費用を、購入時・売却時の両面から詳しく解説し、費用を抑えるためのヒントも紹介します。

購入時に発生する不動産売買の諸費用

登記費用・税金関連の支払い

不動産購入では、まず登記費用が大きな項目です。購入者は「所有権移転登記」を行い、住宅ローンを利用する場合には「抵当権設定登記」も必要になります。これらは司法書士に依頼するのが一般的で、報酬として5〜10万円程度、加えて登録免許税が課されます。
登録免許税は固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出され、所有権移転登記では通常2%(軽減措置あり)、抵当権設定登記では0.4%がかかります。たとえば固定資産税評価額が2,000万円なら、所有権移転登記で約40万円(軽減後は約30万円)となる計算です。

契約書には必ず印紙税がかかります。3,000万円の売買契約書の場合、印紙税額は1万円(軽減措置適用後)です。高額物件になるほど印紙税も上がるため、見落とさずに計算しておきましょう。

また、契約日を基準に固定資産税・都市計画税の精算金を支払う必要があります。これは売主が1年分を納付済みの場合に、残り期間分を日割りで買主が負担する仕組みです。数万円〜十数万円程度になることが多いですが、契約時にまとめて支払います。

保険料・生活開始に必要な費用

購入後に忘れてはいけないのが不動産取得税です。これは不動産の取得に対して課される地方税で、購入から数か月〜1年以内に納付書が届きます。住宅の場合は軽減措置により非課税または減額になる場合がありますが、土地や新築・中古の条件によって異なるため、事前に自治体へ確認することが重要です。

さらに、住宅ローンを組む場合には火災保険や地震保険への加入が求められるケースが多く、10年一括払いでは数十万円規模の費用になることもあります。これらは銀行の融資条件として必須のため、省くことはできません。

引っ越し費用も忘れがちです。距離や荷物量によって数万円〜20万円以上になるほか、新居に合わせて家具や家電を買い替えるとさらに負担が増えます。仲介手数料以外にも、生活開始までの準備資金を確保しておくことが、スムーズな新生活のスタートにつながります。

不動産購入時の所得税、火災・地震保険

売却時に発生する不動産売買の諸費用

登記・測量に関する費用

不動産売却時にまず必要なのは抵当権抹消登記です。住宅ローンを完済しても、登記簿上に抵当権が残っていれば売却できません。登録免許税は不動産1件につき1,000円と少額ですが、司法書士への依頼料が1〜2万円ほどかかります。

土地や一戸建てを売却する場合、境界を明確にするために測量費用が発生することがあります。隣地との境界が不明確なままでは売買契約が成立しにくいため、確定測量図を作成する必要があるのです。これには20万円〜50万円程度かかる場合があり、分筆や境界杭の設置が必要な場合はさらに高額になります。

税金・修繕関連の費用

不動産を売却して利益(譲渡益)が出ると、譲渡所得税と住民税が課されます。所有期間が5年超なら長期譲渡となり税率は20.315%ですが、5年以下の短期譲渡では39.63%と約2倍になります。
譲渡所得は「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」で計算され、取得費には購入時の価格や諸費用が含まれます。譲渡費用には仲介手数料や測量費用、解体費用なども含めることができるため、領収書は必ず保管しておきましょう。

また、売却前に壁紙の貼り替えや設備交換などの修繕費用が必要になることもあります。これにより売却価格を引き上げたり、成約スピードを早められる場合がありますが、リフォーム費用をかけすぎると利益を圧迫します。費用対効果を慎重に見極めることが大切です。

不動産売却時にかかる抵当権抹消登記費、譲渡所得税・住民税

不動産売買の資金計画と費用対策

諸費用の見積もりと情報収集

不動産売買の資金計画を立てる際は、仲介手数料以外の諸費用の全体像を把握しておくことが欠かせません。登記費用や税金、保険料は条件によって異なりますので、司法書士や税理士、不動産会社、自治体窓口などから正確な情報を得るようにしましょう。

購入時の諸費用は物件価格の5〜8%、売却時の諸費用は売却価格の3〜6%程度が目安です。ただし測量や大規模修繕が必要な場合は大きく増えることがあります。

予備費の確保と制度活用

予期せぬ出費に備え、予備費を総額の5〜10%程度確保するのが理想です。購入時には住宅ローン控除、不動産取得税の軽減措置、自治体の補助金などを活用すれば負担を減らせます。売却時には3,000万円特別控除や特定居住用財産の買換え特例などを利用すれば、譲渡所得税を軽減できます。

不動産売買は高額な取引だからこそ、仲介手数料以外の諸費用も含めた総額を把握し、余裕を持った計画を立てることが成功の鍵です。

不動産売買で重要な資金計画と予算管理